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部厚
「部厚〜」の文章内での使われ方:小説や文学作品の中から探す
部厚の前後の文節・文章を表示しています。該当する15件の作品を表示しています。
検索対象[仮名遣い:新字新仮名]
「聖書」より 著者:生田春月
詩集の下から引出して、僕の手に渡してくれた。見るといかにも古色蒼然たるものだ。全
部厚革で、製本はひどく堅牢だ。革はところどころはげたり、すりむけたりしている。縁....
「歌行灯」より 著者:泉鏡花
、うっかり気を取られて、釜前の湯気に朦として立っていた。……浅葱の襷、白い腕を、
部厚な釜の蓋にちょっと載せたが、丸髷をがっくりさした、色の白い、歯を染めた中年増....
「七宝の柱」より 著者:泉鏡花
朱の獅子に騎しておわします。獅子の眼は爛々として、赫と真赤な口を開けた、青い毛の
部厚な横顔が視られるが、ずずッと足を挙げそうな構えである。右にこの轡を取って、ち....
「春昼」より 著者:泉鏡花
返してもう一枚、彳んだ人の前の戸を開けた。 虫ばんだが一段高く、かつ幅の広い、
部厚な敷居の内に、縦に四畳ばかり敷かれる。壁の透間を樹蔭はさすが、縁なしの畳は青....
「雪柳」より 著者:泉鏡花
なし、例の貸本屋を転々する写本でなく、実にこの婆さんの兄の間淵が秘蔵した、半紙を
部厚に横綴の帳面仕立で。……都合があって、私と二人で自炊をして、古襦袢、ぼろまで....
「縮図帖」より 著者:上村松園
は三、四十冊ぐらい。一冊ごとの枚数、厚さというものもべつに定めていないから大そう
部厚いものから極く薄っぺらなものまで雑多である。だからして格好もさまざまで、竪横....
「軍用鼠」より 著者:海野十三
ワイトマンは小猫のミミーを大きな手で掴んだまま、空になった籠のまわり――特に
部厚い木を貼った籠の下半分に近づけた。小猫は苦しがって身もだえした。そのたびに鈴....
「国際殺人団の崩壊」より 著者:海野十三
足どりをはこんでゆく紳士がある。茶色のソフト帽子の下に強度の近眼鏡があって、その
部厚なレンズの奥にキラリと光る小さな眼の行方は、ペイブメントの上に落ちているよう....
「深夜の市長」より 著者:海野十三
人が気づいたことであろう。彼等はあの厳しい赤い煉瓦壁体の中には、古ぼけた事務室と
部厚い壁と幅の広い階段と長い廊下のほかに、なにものも予想していないであろう。 ....
「赤外線男」より 著者:海野十三
あった。 ギーッ、ギーッという音に、不図気がついたのは例の熊岡警官だった。彼は
部厚な犯罪文献らしいものから、顔をあげて入口を見た。 「だッ誰かッ」 夜勤の署....
「赤耀館事件の真相」より 著者:海野十三
に、壁にとりつけられてあった自記式の気温計、湿度計、気圧計の中を開いて、白い紙が
部厚にまかれたものをとり出しました。その巻紙の上には、時々刻々の気温、湿度、気圧....
「戦時旅行鞄」より 著者:海野十三
巷を吹きだした頃のことである。 その頃、金博士の許へ、差出人の署名のない一通の
部厚い書面が届いた。博士が封を切って中を読んでみると、巻紙の上には情緒纏綿たる美....
「地球盗難」より 著者:海野十三
。 岩蔵はもう起きていた。そして傍のベッドの上には、武夫の父河村が、胸一杯に、
部厚な繃帯を巻いて、唇は色うすく、顔色は土のように蒼ざめていたけれど、気持よげに....
「人間灰」より 著者:海野十三
が入ってきた。 「やあ、これはどうも……」 と、先に立った頤髭のある土色の顔に
部厚の近眼鏡をかけた小男が奇声でもって挨拶をした。それは工場主である理学博士|赤....
「蠅男」より 著者:海野十三
うのが見られる。この奇人館はどこかそのアルコール漬けの臓器に似ていた。 灰色の
部厚いコンクリートの塀、そのすぐ後に迫って、膨れ上ったような壁体でグルリと囲んだ....