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「鉄色〜」の文章内での使われ方:小説や文学作品の中から探す

鉄色の前後の文節・文章を表示しています。該当する15件の作品を表示しています。
検索対象[仮名遣い:新字新仮名]
大導寺信輔の半生」より 著者:芥川竜之介
妙に静かだった。彼はこう言う往来をはるばる本郷へ帰る途中、絶えず彼の懐ろの中に鋼鉄色の表紙をした「ツアラトストラ」を感じていた。しかし又同時に口の中には何度も彼....
半七捕物帳」より 著者:岡本綺堂
はすすみ寄って、そこに横たえてある男の死骸をのぞいた。男は手織り縞の綿衣をきて、鉄色木綿の石持の羽織をかさねていた。履物はどうしてしまったのか、彼は跣足であった....
ネギ一束」より 著者:田山花袋
も充分には受けえられぬ不幸の身であった。彼女は額の大きい、鼻の丸い、ちぢれ毛の、鉄色した醜い女であった。 しかし十九歳で故郷を去ったお作には相手があった。この....
金魚撩乱」より 著者:岡本かの子
ートの中へ仰向けに臥そべった。空の肌質はいつの間にか夕日の余燼を冷まして磨いた銅鉄色に冴えかかっていた。表面に削り出しのような軽く捲く紅いろの薄雲が一面に散って....
神州纐纈城」より 著者:国枝史郎
笑しく思われた。 昔ながらの洞窟であった。 三方四方岩壁であった。その岩壁は鉄色であった。 岩壁には無数に皺があった。その一所に龕があった。刳り抜いて作っ....
みみずのたはこと」より 著者:徳冨健次郎
豹か虎かを見て居る様で、凄い。蜥蜴の体は最早トラの胃の中にあるに、切れて落ちた鋼鉄色の尾の一片は、小さな一疋の虫かなんぞの様にぐるっと巻いたりほどけたりして居る....
梅津只円翁伝」より 著者:杉山萠円
下の月並能の番組が決定すると、祖父の灌園は総髪に臘虎帽、黄八丈に藤色の拝領羽織、鉄色献上の帯、インデン銀|煙管の煙草入、白足袋に表付下駄、銀柄の舶来洋傘(筆者の....
踊る地平線」より 著者:谷譲次
。蒼ぞらでは、ほるつがる国陸軍爆撃機の生意気な二列縦隊だった。その真下の沖に、鋼鉄色に化粧した木造巡洋艦が欠伸していた。これは領海に出没する隣国すぺいんの海老採....
踊る地平線」より 著者:谷譲次
、三十あまりの、それでも、見たところはたしかにパリジェンヌのようでした。彼女は鋼鉄色の薄い夜会服を着て、廻転盤と「白い丸薬」との機会的な接吻に眼を据えているだけ....
黒百合」より 著者:泉鏡花
久留米の蚊飛白に兵児帯して、少し皺になった紬の黒の紋着を着て、紺足袋を穿いた、鉄色の目立たぬ胸紐を律義に結んで、懐中物を入れているが、夕涼から出懸けたのであろ....
無人島に生きる十六人」より 著者:須川邦彦
の空にうかぶ雲は、レモン色の美しさ、それが煉瓦色になり、やがて紅色に、だんだんと鉄色の夕やみになってしまった。西の空も水平線も黒くなると、星が青く赤く、鏡の海に....
娘煙術師」より 著者:国枝史郎
る。太くうねっている一文字の眉は、臥蚕という文字にうってつけというべきであった。鉄色の羽織を着ていたが、それは高価な鶉織らしく、その定紋は抱茗荷である。はいてい....
鴎外の思い出」より 著者:小金井喜美子
折々『装剣奇賞』などを見ていました。その本は初め鍔を少し集めた時に求めたので、「鉄色にっとり」などという言葉を、私なども覚えました。象眼のある品などは一々袋に入....
火夫」より 著者:カフカフランツ
を十分に意識しながら両手をズボンのポケットに突っこみ、しわくちゃな、革のような、鉄色のズボンに包まれている脚をベッドの上に投げ出して、ながながとのばした。そこで....
南半球五万哩」より 著者:井上円了
に足るものである。屋壁は紅くぬられているだけでなく、人々もまた白色・黄色・銅色・鉄色と多種である。) 電車縦横、全市街に貫通し、いずれの所に至るも電車の便あら....