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鑢
「鑢〜」の文章内での使われ方:小説や文学作品の中から探す
鑢の前後の文節・文章を表示しています。該当する15件の作品を表示しています。
検索対象[仮名遣い:新字新仮名]
「少年」より 著者:芥川竜之介
こもる声に薄日の光りを震《ふる》わせていた鳩を思い出さずにはいられないのである。
鑢屋《やすりや》の子の川島は悠々と検閲を終った後《のち》、目くら縞の懐ろからナイ....
「街頭の偽映鏡」より 著者:佐左木俊郎
するらしい様子もなく、吉本は微笑を含みながら言うのであったが、永峯にはなにかしら
鑢《やすり》にかけられるようなものが身内を走る感じだった。 「それだけは許してく....
「人外魔境」より 著者:小栗虫太郎
の所に天幕をはっていて、みるも哀れな死を遂げているのだ。氷海嘯の端に当ったらしく
鑢で切ったように、左腕、左膝から下が無残にもなくなっている。折竹は、おのぶサンを....
「大菩薩峠」より 著者:中里介山
下の透間へ手を当てると、その透間からスーッと抜き取ったのは、柄《え》のない一挺の
鑢《やすり》のようなものであります。 「これはどうしたのだ」 「今いう贋金遣《に....
「白峰山脈縦断記」より 著者:小島烏水
ちは海抜八千尺ほどの、甲州アルプスへ来た、山の上には多年雪に氷に磨り減らされて、
鑢のように尖った岩が、岩とつづいて稜角がプラットホームのように長い、甲府平原から....
「鷭狩」より 著者:泉鏡花
なって飛込んだろう。 さまでの苦痛を堪えたな。――あとでお澄の片頬に、畳の目が
鑢のようについた。横顔で突ぷして歯をくいしばったのである。そして、そのくい込んだ....
「踊る地平線」より 著者:谷譲次
主人の声」の蓄音機レコードのほうが宜しう御座いますわ。お茶のなかへあれをすこし爪
鑢で削り落していただきますと、どんなにスチイムの利いてる応接間で何時間|他所行き....
「灰色の記憶」より 著者:久坂葉子
、やめられなかった。そのため私は教場でたびたびたたされた。頭の上に、重い謄写版の
鑢をのせられ、一時間中黒板の横にたったこともあった。しかし別に恥しいとは思わなか....
「塩花」より 著者:豊島与志雄
爪の先を、
鑢で丹念にみがきながら、山口専次郎は快心の微笑を浮かべた。 ――盲目的に恋する....
「生死卍巴」より 著者:国枝史郎
ろう。何が箱の中に入っていたか? 日本の国内では見られないような、精巧を極めた洋
鑢だの、メスだの錐だのの道具類が、整然として入っていた。 碩寿翁であったがメス....
「博物誌」より 著者:岸田国士
えて、それを隠れ家の入口のところに撒く。 どうも邪魔になるそこの大きな草の根を
鑢で削る。 ひと息つく。 それから、例のちっぽけな懐中時計を出して、ねじを巻....
「白銅貨の効用」より 著者:海野十三
効用 爪を鋏で切りっぱなせば角があって方々へ引っかかる。この角をなくするために
鑢というものがあるが、おいそれと常に間に合うものではない。これには十銭白銅貨の中....
「暗夜の格闘」より 著者:小酒井不木
さをはかりました。それから硝子戸をあけて格子を見ました。果たしてそのうちの二本が
鑢で切られ、左右へ折りまげてありました。 それから俊夫君は閾を検べ、さらに、懐....
「鼻に基く殺人」より 著者:小酒井不木
おりの艶消し瓦斯入りの、一〇〇ボルト六〇ワットの電球であった。直ちにポケットから
鑢を取り出して先端をこすると、間もなくビュンという音がした。 直径四ミリメート....
「フレップ・トリップ」より 著者:北原白秋
処かの無電がしっきりなく邪魔をしかけて、それからの義太夫も太棹も聴いてる方で頭を
鑢でこすられるようで苦しかった。 翌朝はまだ暗いうちから取り騒いだが、大洋の黎....