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陰影
「陰影〜」の文章内での使われ方:小説や文学作品の中から探す
陰影の前後の文節・文章を表示しています。該当する15件の作品を表示しています。
検索対象[仮名遣い:新字新仮名]
「大導寺信輔の半生」より 著者:芥川竜之介
。けれどもこの朝の百本杭は――この一枚の風景画は同時に又本所の町々の投げた精神的
陰影の全部だった。
二 牛乳
信輔は全然母の乳を吸ったことのない少年....
「春」より 著者:芥川竜之介
を見ながら、出来るだけ気軽にこう言った。と言うのは彼女の感情を、――かなり複雑な
陰影を帯びた好奇心だの非難だのあるいはまた同情だのを見透《みす》かされないためも....
「開化の良人」より 著者:芥川竜之介
にまたその顔には、貴族階級には珍らしい、心の底にある苦労の反映が、もの思わしげな
陰影を落していた。私は先達《せんだっ》ても今日の通り、唯一色の黒の中に懶《ものう....
「日光小品」より 著者:芥川竜之介
をうたっている。
和田さんの「※燻《いくん》」を見たことがある。けれども時代の
陰影とでもいうような、鋭い感興は浮かばなかった。その後にマロニックの「不漁」を見....
「家霊」より 著者:岡本かの子
で晒されてしまった便《たよ》りない様子、能の小面《こおもて》のように白さと鼠色の
陰影だけの顔。やがて自分もそうなるのかと思うと、くめ子は身慄いが出た。 くめ子....
「宇宙の始まり」より 著者:アレニウススヴァンテ
して 幸いある神々の動がぬ永久の御座とはなりぬ。 (注一) エレボス。原始の闇、
陰影の領土。 (注二) エーテル。上層の純粋な天の気、後に宇宙エーテルとして、火....
「鍵から抜け出した女」より 著者:海野十三
といって微かに笑った。 作ってくれた朝飯の膳に向いあったとき、僕は庵主が、昨夜
陰影の強い灯影でみたよりも、更に年若いのに愕いた。よくは分らないけれど、ひょっと....
「山と雪の日記」より 著者:板倉勝宣
ブルーの空に、浮き上っている。冬の柔かな太陽の光線の下に眠れる谷々は、一方に濃い
陰影を見せて、白く輝く面とその
陰影とは、柔かい曲線と、男性的な線とを画いていた。....
「春の槍から帰って」より 著者:板倉勝宣
に咲いた百姓屋の背景に、白馬岳の姿が薄雲の中に、高くそびえて、雪が日に輝いて谷の
陰影が胸のすくほど気持ちよく拝める。 乾いた田圃には、鶏の一群が餌をあさってい....
「火葬国風景」より 著者:海野十三
高く、そしてその間に挟まって店の方を向いているバアテンダーはまるで蝋人形のような
陰影をもっていた。 「いらっしゃいまし。……貴方のお席はチャンとあれに作ってござ....
「かの女の朝」より 著者:岡本かの子
をありの儘に写した写真なのだから仕方がない。人間の顔を写してもそうなのだ、平たい
陰影の少ない東洋人の顔より、筋骨的な線のはっきりした西洋人の顔が多く効果的に写る....
「江口渙氏の事」より 著者:芥川竜之介
江口は決して所謂快男児ではない。もっと複雑な、もっと
陰影に富んだ性格の所有者だ。愛憎の動き方なぞも、一本気な所はあるが、その上にまだ....
「科学者と夜店商人」より 著者:海野十三
。恐らくは明るさの密度の点では銀座街もこれには及ぶまいと思われた。縁日の商人は、
陰影のない照明をやるのに照明学に従って間接照明法を用いず電球を裸にむき出した儘の....
「決闘場」より 著者:岡本かの子
じように、晩春の午後の陽射しを受けて淋しく燻し銀色に輝く白樺の幹や、疎らな白樺の
陰影に斜めに荒い縞目をつけられて地味に映えて居る緑の芝生を眺めて居た。 ワルト....
「涸沢の岩小屋のある夜のこと」より 著者:大島亮吉
ちの右手の高きには前穂高の巓がなおさっきの夕焼の余燼で灼やいて、その濃い暗紫色の
陰影は千人岩の頭のうえまでものびていた。そしてはるかの谷にはすでに陰暗な夜の物影....