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陰惨
「陰惨〜」の文章内での使われ方:小説や文学作品の中から探す
陰惨の前後の文節・文章を表示しています。該当する15件の作品を表示しています。
検索対象[仮名遣い:新字新仮名]
「或る女」より 著者:有島武郎
病室のある限りの窓にはかんかんと灯《ひ》がともって、白いカーテンが引いてあった。
陰惨な病室にそう赤々と灯のともっているのはかえってあたりを物すさまじくして見せた....
「外科室」より 著者:泉鏡花
と、広き建具と、長き廊下との間にて、異様の跫音《きょうおん》を響かしつつ、うたた
陰惨の趣をなせり。 予はしばらくして外科室に入りぬ。 ときに予と相目して、脣....
「蠅男」より 著者:海野十三
たれては、一面に世界地図のような汚斑がべったりとつき、見るからにゾッとするような
陰惨な邸宅だった。 それでも往来に面したところには、赤く錆びてはいるが鉄柵づく....
「デパートの絞刑吏」より 著者:大阪圭吉
働いているのを、エレベーターの中から見渡しつつ間もなく私達は屋上へ出た。今までの
陰惨な気持を振り捨てて晴れ渡った初秋の空の下に遠く拡がる街々の甍を見下ろしながら....
「鶴は病みき」より 著者:岡本かの子
、麻川氏を交ぜて写真を撮った。撮られて仕舞てから氏は、近頃の自分がいかに写真面に
陰惨に撮れる例が多いかということを非常に気にし出した。で、もし麻川氏が
陰惨にとれ....
「七宝の柱」より 著者:泉鏡花
ああ、大な沼だ。」 と見る。……雨水が渺々として田を浸すので、行く行く山の陰は
陰惨として暗い。……処々巌蒼く、ぽっと薄紅く草が染まる。嬉しや日が当ると思えば、....
「売色鴨南蛮」より 著者:泉鏡花
吸で、剃刀で、……」 と、今|視めても身の毛が悚立つ。……森のめぐりの雨雲は、
陰惨な鼠色の隈を取った可恐い面のようで、家々の棟は、瓦の牙を噛み、歯を重ねた、そ....
「薄紅梅」より 著者:泉鏡花
女にして、読書界に舌を巻かせた、あの、すなわちその、怪しからん……しかも梅雨時、
陰惨としていた。低い格子戸を音訪れると、見通しの狭い廊下で、本郷の高台の崖下だか....
「黒百合」より 著者:泉鏡花
らんとするがごとく、響に触れ、燈に映って不残動くように見えて、一種言うべからざる
陰惨の趣がある。お兼はじっと見て物をも言わぬ、その一言も発しないのを、感に耐えた....
「霊訓」より 著者:浅野和三郎
進歩の所縁となるべき関係以外は、全然その存在を認められない。かの徒らに地上生活を
陰惨ならしめ、徒らに魂の発達を阻害する人為的束縛は、肉体の消滅と同時に、跡方もな....
「蜜柑」より 著者:芥川竜之介
の曇天に押しすくめられたかと思う程、揃って背が低かった。そうして又この町はずれの
陰惨たる風物と同じような色の着物を着ていた。それが汽車の通るのを仰ぎ見ながら、一....
「多神教」より 著者:泉鏡花
の鬼の形相を火で明かに映し出した。これでは御罰のしるしにも、いましめにもならぬ。
陰惨|忍刻の趣は、元来、この婦につきものの影であったを、身ほどのものが気付かなん....
「母と娘」より 著者:岡本かの子
めな事に深く心を打たれました。私達はたとえ独逸を知り其の国語を習うためとは言え、
陰惨なベルリンへやって来た事を少し後悔して居ります。でも二三日居付いたら、どう私....
「註文帳」より 著者:泉鏡花
して三味線の音もしない。ただ遥に空を衝いて、雲のその夜は真黒な中に、暗緑色の燈の
陰惨たる光を放って、大屋根に一眼一角の鬼の突立ったようなのは、二上屋の常燈である....
「ピストルの使い方」より 著者:泉鏡花
の魔窟だと思えば可い。十年人の棲まない妖怪邸の天井裏にも、ちょっとあるまいと思う
陰惨とした、どん底に――何と、一体白身の女神、別嬪の姉さんが、舞台の礫の時より、....