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陽炎の
「陽炎の〜」の文章内での使われ方:小説や文学作品の中から探す
陽炎のの前後の文節・文章を表示しています。該当する15件の作品を表示しています。
検索対象[仮名遣い:新字新仮名]
「妖術」より 著者:泉鏡花
しかけながら、 「貴下、濡れますわ。」 と言う。瞳が、動いて莞爾。留南奇の薫が
陽炎のような糠雨にしっとり籠って、傘が透通るか、と近増りの美しさ。 一帆の濡れ....
「雛妓」より 著者:岡本かの子
、流石に年頃まえの小娘の肩から胴、脇、腰へかけて、若やいだ円味と潤いと生々しさが
陽炎のように立騰り、立騰っては逸作へ向けてときめき縺れるのをわたくしは見逃すわけ....
「綺堂むかし語り」より 著者:岡本綺堂
柚があたたかい波にゆらゆらと流れていた。窓硝子を洩れる真昼の冬の日に照らされて、
陽炎のように立ち迷う湯気のなかに、黄いろい木実の強い匂いが籠っているのも快かった....
「かんかん虫」より 著者:有島武郎
声がふと淋しくなったと思ったので、振向いて見ると彼は正面を向いて居た。波の反射が
陽炎の様にてらてらと顔から半白の頭を嘗めるので、うるさ相に眼をかすめながら、向う....
「小春の狐」より 著者:泉鏡花
々と汐が満ちたのである。水は光る。 橋の袂にも、蘆の上にも、随所に、米つき虫は
陽炎のごとくに舞って、むらむらむらと下へ巻き下っては、トンと上って、むらむらとま....
「第二菎蒻本」より 著者:泉鏡花
っと、ありたけの茶を浴びたのである。 むらむらと立つ白い湯気が、崩るる褄の紅の
陽炎のごとく包んで伏せた。 頸を細く、面を背けて、島田を斜に、 「あっ。」と云....
「茸の舞姫」より 著者:泉鏡花
うに、幾人となく女が舞込む。 ――夜、その小屋を見ると、おなじような姿が、白い
陽炎のごとく、杢若の鼻を取巻いているのであった。 大正七(一九一八)年四月....
「南地心中」より 著者:泉鏡花
した。 「凄かったよ、私は。……その癖、この陽気だから、自然と淀川の水気が立つ、
陽炎のようなものが、ひらひらと、それが櫓の面へかかると、何となく、※と美しい幻が....
「伊勢之巻」より 著者:泉鏡花
った。 その時打向うた卓子の上へ、女の童は、密と件の将棋盤を据えて、そのまま、
陽炎の縺るるよりも、身軽に前後して樹の蔭にかくれたが、枝折戸を開いた侍女は、二人....
「星女郎」より 著者:泉鏡花
から、四斗樽ほどな大蛇の頭が覗くというでもござるまい。 なお熟と瞻ると、何やら
陽炎のようなものが、鼬の体から、すっと伝り、草の尖をひらひらと……細い波形に靡い....
「地虫」より 著者:小栗虫太郎
が、この期に及んで、なんという態だ」 その翌夜は、また誰かの血が、キラキラする
陽炎のようなものを、立てるであろうと思うと、さすがの左枝でさえも、落着かず自制を....
「瓜の涙」より 著者:泉鏡花
ある。 と、この一廓の、徽章とも言つべく、峰の簪にも似て、あたかも紅玉を鏤めて
陽炎の箔を置いた状に真紅に咲静まったのは、一株の桃であった。 綺麗さも凄かった....
「卵塔場の天女」より 著者:泉鏡花
した。上には知らぬ間の大鯛が尾を刎ねて、二人の抜出した台所に、芬と酢の香の、暖い
陽炎のむくむく立って靡くのは、早鮨の仕込みらしい。 「兄さん――さあ、お久さん…....
「お姫さまと乞食の女」より 著者:小川未明
れが落ちてしまうと雪が降りました。そして、しばらくたつとまた、若草が芽をふいて、
陽炎のたつ、春がめぐってきたのであります。 お城の内には、花が咲き乱れました。....
「民衆芸術の精神」より 著者:小川未明
っているのであろう。其れから白い湯気が立ち上っています。うす暗い、煤けた家の裡の
陽炎のように上る湯気には、また限りないなつかしさが籠る。そして季節は秋の末であろ....