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階調
「階調〜」の文章内での使われ方:小説や文学作品の中から探す
階調の前後の文節・文章を表示しています。該当する15件の作品を表示しています。
検索対象[仮名遣い:新字新仮名]
「冬の蠅」より 著者:梶井基次郎
。しかし直射光線には偏頗《へんぱ》があり、一つの物象の色をその周囲の色との正しい
階調から破ってしまうのである。そればかりではない。全反射がある。日蔭は日表《ひな....
「檸檬」より 著者:梶井基次郎
。そしてそれは上出来だった。 見わたすと、その檸檬の色彩はガチャガチャした色の
階調をひっそりと紡錘形の身体の中へ吸収してしまって、カーンと冴えかえっていた。私....
「黒死館殺人事件」より 著者:小栗虫太郎
に幾分残っていなければならぬ、童心などは微塵も見られない。ことに、媚麗しい容色の
階調を破壊しているのが、落着きのない眼と狭い額だった。法水は丁寧に椅子を薦めて、....
「道標」より 著者:宮本百合子
中で、若葉の緑や建物の黒く滑らかな石の肌と絹びろうどの銀灰色とはそれだけで一つの
階調をつくっている。そのなかにたった一つ、見ていればいるほどデザインが面白くなっ....
「南路」より 著者:宮本百合子
到着のとき、停車場では、機関車から小さい手押車まで、あらゆる声と響とを振撒いて、
階調のある活動をする。けれども、出て行くときは、何時に限らず、気抜けのするほど、....
「生の拡充」より 著者:大杉栄
の中にのみ、今日生の至上の美を見る。征服の事実がその頂上に達した今日においては、
階調はもはや美ではない。美はただ乱調にある。
階調は偽りである。真はただ乱調にある....
「めでたき風景」より 著者:小出楢重
たがるのもあるいは同じ要求からかも知れないと思う。 でもまだ初夏には若葉のよき
階調があるけれども、もう梅雨を過ぎるといよいよ緑は深くどす黒く、ただもう鬱蒼とし....
「油絵新技法」より 著者:小出楢重
るか、太陽の光はどんな都合に世の中を照しているのか、それによる色彩の変化強弱その
階調等それらを如何にして画面へ現すものか、といった風の事を調べるのである。 そ....
「レ・ミゼラブル」より 著者:豊島与志雄
祭らは、この小さな女工のうちに、パリー婦人の透明な美を通して、古代の聖《きよ》い
階調を見い出したであろう。この下層の娘はその美の血統を持っていた。彼女は風姿と調....
「潜航艇「鷹の城」」より 著者:小栗虫太郎
て、その間にこの手紙を差し込んで置いたのです。そして、あの美しい唇が膨れて、顔の
階調が破壊されるのを、貴女は何よりも、怖れていたのでした」 そうして語られる夢....
「人魚謎お岩殺し」より 著者:小栗虫太郎
な大波の出現、雷のような海底地震の轟き――などに気を打たれていたが、やがて、海の
階調のすべてを知り尽くしてしまうと、静かに赦免の日を待つようになった――しかしそ....
「「壇」の解体」より 著者:中井正一
するに足りない。利潤函数をぬき去りつつそれを今考察すればいい。その配列の対比性、
階調性はフィルムのモンタージュと同じ様に、新しきリアリズムのもつ企画性である。や....
「魔都」より 著者:久生十蘭
て行った。
廊下を駆けて行く気狂い染みた総監の足音は四壁に反響して、一種異様な
階調をつくりながらだんだん遠ざかって行く。真名古は憐れむようにその方を眺めながら....
「墓地展望亭」より 著者:久生十蘭
」 「リストリア王国万歳!」 「エレアーナ王女万歳!」 高低さまざまに、微妙な
階調をつくりながら、渾然たる歓喜の総量となって空に立ちのぼる。 竜太郎の乗った....
「肌色の月」より 著者:久生十蘭
ら来る風が、潮騒のような音をたてて林の中を吹きぬけてゆく。風の音と鼾の音が一種の
階調をつくって、ひとを睡気にさそいこむ。久美子は床に坐り、長椅子の端に額をおしつ....