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靠れ
「靠れ〜」の文章内での使われ方:小説や文学作品の中から探す
靠れの前後の文節・文章を表示しています。該当する15件の作品を表示しています。
検索対象[仮名遣い:新字新仮名]
「職工と微笑」より 著者:松永延造
だ涙が湧き起って来て、私に憐れみを乞うている如くにさえ見えた。私は顫えて彼の肩に
靠れ、進まぬ足で病院に向った。それから? 「さ、貴方の待っている人が来たよ。ミサ....
「渾沌未分」より 著者:岡本かの子
かしい両腕で涙を拭いた。小初は砂金のように濃かく汗の玉の吹き出た薫の上半身へ頭を
靠れ薫の手をとった。不憫で、そして、いま「男だ」と云ったばかりの薫の声が遠い昔か....
「母子叙情」より 著者:岡本かの子
層の一面の灰紫色の黄昏のような圏内は、五人或は八人ずつの食卓を仕切る胸ほどの低い
靠れ框で区切られている。凡ゆる人間の姿態と、あらゆる色彩の閃きと、また凡ゆる国籍....
「河明り」より 著者:岡本かの子
したとき」といって言葉を切り、そしていい継いだ。「酔った振りして、木ノさんの膝に
靠れかかってやりました。いろ気は微塵もありません。お嬢さんにゃあ済まないけど、お....
「断橋奇聞」より 著者:田中貢太郎
は一杯の茶をもらって、それを飲んでから秀英の繍房へ往った。秀英はその時楼の欄干に
靠れてうっとりとしていた。それは昨日見た若い秀才の顔を浮べているところであった。....
「仮装人物」より 著者:徳田秋声
消えてしまったのであった。庸三はにわかに興奮を感じ、なお硝子戸の引いてある手摺に
靠れて、順々に荷物の積まれるのを見ていたが、小池の采配ですっかり積みこまれ縄がか....
「ズラかった信吉」より 著者:宮本百合子
る夕方のことだ。 ぶるッと身震いして、信吉は目を覚した。いつの間に眠ったのか、
靠れていた窓の外で庭がすっかり暗くなってる。菩提樹《ぼだいじゅ》の下にいつも夜じ....
「婦人と文学」より 著者:宮本百合子
。女は男を愛さずにはいられない。その自然さに、その自然さの時代的な主張にわれから
靠れて、本質においての受け身なところや、又愛とひとくちに云い表わしているその愛の....
「踊る地平線」より 著者:谷譲次
だから窓を開け放して、本人は寝巻か何か引っかけた肉感的なスタイルのまんま、窓枠に
靠れて下の往来を覗きながら、南ヘルス産の黄葡萄酒・北リオハ産の赤葡萄酒なんかと好....
「或る日」より 著者:宮本百合子
人は、さほ子に訊いた。 「どうだね?」 気づかれのした彼女は、ぐったり腕椅子に
靠れ込み、髪をなおしながら、余り快活でなく呟いた。 「さあ。――少し疑問よ」 ....
「清修館挿話」より 著者:林芙美子
を封じましたが、女のひとはふつと唇をはずすと、いつまでも谷村さんの激しい胸の上に
靠れていました。 「人の奥さんつて、本当かい」 「えゝあなた、男の方が長い事此の....
「囚われ」より 著者:豊島与志雄
郎はいつもそういう彼女の眼差しの前にたじろいだ。 孝太郎はよく自分の書斎の机に
靠れて、日のさした障子の紙を見つめながら、富子と自分との間を考えてみた。進むか退....
「薬」より 著者:井上紅梅
わっていたのだ。彼はちょっとあと戻りしてある店の軒下に入った。閉め切ってある門に
靠れて立っていると、身体が少しひやりとした。 「ふん、親爺」 「元気だね……」 ....
「孔乙己」より 著者:井上紅梅
人達は正午の休みや夕方の手終いにいちいち四文銭を出しては茶碗酒を一杯買い、櫃台に
靠れて熱燗の立飲みをする。――これは二十年前のことで、今では値段が上って一碗十文....
「世間師」より 著者:小栗風葉
の呼声ごとに場内は色めきたつ。中にはまた首でも縊りそうな顔をして、冷たい壁に悄り
靠れている者もある。私もそういう人々と並んで、さしあたり今夜の寝る所を考えた。場....