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飽満
「飽満〜」の文章内での使われ方:小説や文学作品の中から探す
飽満の前後の文節・文章を表示しています。該当する15件の作品を表示しています。
検索対象[仮名遣い:新字新仮名]
「或る女」より 著者:有島武郎
美しくなった。その肉体は細胞の一つ一つまで素早《すばや》く春をかぎつけ、吸収し、
飽満するように見えた。愛子はその圧迫に堪《た》えないで春の来たのを恨むようなけだ....
「さようなら」より 著者:田中英光
欲に対する強い信仰があり、それから結ばれてゆき、お互いが自分たちの肉体の適応性に
飽満した上で、心も結ばれていったので、ぼくはその汚された女のリエに、生れてはじめ....
「家霊」より 著者:岡本かの子
った。椎の若葉よりも葉越しの空の夕月を愛した。そういうことは彼女自身却って若さに
飽満していたためかも知れない。 店の代々の慣わしは、男は買出しや料理場を受持ち....
「生まれいずる悩み」より 著者:有島武郎
倦怠からのがれるほかはあるまいとひそかに同情さえされぬではない。その人たちが生に
飽満して暮らすのはそれでいい。しかし君の周囲にいる人たちがなぜあんな恐ろしい生死....
「惜みなく愛は奪う」より 著者:有島武郎
詈でないのを感じて私自身の卑陋を悲しまねばならなかった。氏が凡ての虚偽と堕落とに
飽満した基督旧教の中にありながら、根ざし深く潜在する尊い要素に自分のけだかさを化....
「仮装人物」より 著者:徳田秋声
が、それだけに低徊の情も断ち切りがたいものであった。 それなのに庸三はしばしば
飽満の情に疲れて、救いの第三者の現われることを希った。自分の友達であると葉子の友....
「ジャン・クリストフ」より 著者:豊島与志雄
ふれながら、時々、破壊し、焼きつくし、粉砕し、息苦しい自分の力を盲目狂暴な行為で
飽満させたいという、欲望に駆られた。たいていそういう発作は、突然の精神|弛緩《し....
「ジャン・クリストフ」より 著者:豊島与志雄
焼きつくす火が流れるのを感ずる。醸造|樽《だる》中の葡萄《ぶどう》の実のように、
飽満せる魂は坩堝《るつぼ》の中で沸きたつ。生と死との無数の萌芽《ほうが》が、魂を....
「ジャン・クリストフ」より 著者:豊島与志雄
苦悶《くもん》のおののきを、ほとんど思ってもみない。もしそれを思いやるとしても、
飽満した身体の鈍重な皮肉さで、それを冷淡に批判してしまう。 がついに作品は発表....
「ジャン・クリストフ」より 著者:豊島与志雄
んど醜くさえもなりたかった。そして、ただ自分だけとして愛されることを、自分の心が
飽満しかつ渇望している愛のために愛されることを、なおいっそう確かめたかった……。....
「ジャン・クリストフ」より 著者:豊島与志雄
そこなわれやすい。精神は弱々しくなった気がして、漠然《ばくぜん》たる悲哀、事物に
飽満した倦怠《けんたい》、自分のなした事柄にたいする厭気《いやけ》、他の事をなし....
「純粋経済学要論」より 著者:手塚寿郎
、所有者(1)に対し、充足要求の最も強い欲望を充すべき第一の単位から、消費すれば
飽満を感ぜしめるような最終の単位まで、次第に強さを減じていく強度利用をもつもので....
「唇草」より 著者:岡本かの子
、咲き凋んで仕舞うかするに決ってることだけは知っています。つまり、結婚へ急ぐか、
飽満して飽きて仕舞うか、どっちかですね。そこで恋愛の熱情は肉体に移さずなるだけ長....
「二葉亭四迷の一生」より 著者:内田魯庵
だ。が、ビェリンスキーに傾倒しゴンチャローフ、ツルゲーネフ、ドストエフスキー等に
飽満した二葉亭が『書生気質』の著者たる当時の春廼舎に教えられる事が余り多くなかっ....
「フレップ・トリップ」より 著者:北原白秋
もうちこんで見たかったのである。ほとんど境涯的にまで、そうした思無邪の旅ごころを
飽満さしたかったのだ。南国生れの私として、この念願は激しい一種の幻疾ですらあった....