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香ばしい
「香ばしい〜」の文章内での使われ方:小説や文学作品の中から探す
香ばしいの前後の文節・文章を表示しています。該当する15件の作品を表示しています。
検索対象[仮名遣い:新字新仮名]
「冬の日」より 著者:梶井基次郎
? そんなことが堯には朧《おぼろ》げにわかるように思われた。 肉を炙《あぶ》る
香ばしい匂いが夕凍《ゆうじ》みの匂いに混じって来た。一日の仕事を終えたらしい大工....
「東海道五十三次」より 著者:岡本かの子
出来ました」と運んで来た。別に変った作り方でもなかったが、炊《た》き立ての麦飯の
香ばしい湯気に神仙の土のような匂いのする自然薯《じねんじょ》は落ち付いたおいしさ....
「俊寛」より 著者:菊池寛
小屋まで引きずって帰るのは苦しい仕事であった。が、それを炙ると、新鮮な肉からは、
香ばしい匂いが立ち、俊寛の健啖な食欲をいやが上にも刺激する。 彼は、毎日のよう....
「耽溺」より 著者:岩野泡鳴
だか胸持ちが悪くなって来て、自分の身までが全くきたない毛だ物になっているようだ。
香ばしいはずの皿も、僕の鼻へは、かの、特に、吉弥が電球に「やまと」の袋をかぶせた....
「蠅男」より 著者:海野十三
つしか彼を散歩と称して、臭気漂う真只中に押しやっていたのだった。 それは一種|
香ばしいような、そして官能的なところもある悪臭だった。彼は歩いているうちに、臭気....
「巴里祭」より 著者:岡本かの子
ので、通い女中ロウジイヌが蓄音器をかけて行って呉れたのだ。野は一面に野気の陽炎。
香ばしい乾草の匂いがユングフラウを中心に、地平線の上へ指の尖きを並べたようなアル....
「霊界通信 小桜姫物語」より 著者:浅野和三郎
上の庭園とさしたる相違もございませぬが、ただあんなにも冴えた草木の色、あんなにも
香ばしい土の匂いは、地上の何所にも見受けることはできませぬ。こればかりは実地に行....
「母への追慕」より 著者:上村松園
して、母が夜中に起きてほいろをかけている容子が聞えるのであった。 プゥ……ンと
香ばしい匂いが寝間にまでただよって来て、私はその匂いを嗅ぎながらふたたびうとうと....
「明治開化 安吾捕物」より 著者:坂口安吾
するということは生涯隔離されるということらしいですな」 光子の突きとめたことは
香ばしいことではなかった。そのころの精神病院は小松川にフーテン院というものがあっ....
「赤格子九郎右衛門」より 著者:国枝史郎
りもありません。 旗本や御家人や勤番侍などへ夫れと無く探り入れても見ましたが、
香ばしいこともありません。かいくれ目星が付かない中にどんどん日数が経って行って一....
「三筋町界隈」より 著者:斎藤茂吉
る児童が立って敬礼をする。そのあとに煙草の煙の香が残る。煙は何ともいえぬ好い香で
香ばしいような酸っぱいような甘いような一種のかおりである。少年の私はいつもその香....
「名人地獄」より 著者:国枝史郎
の光が、幽かに青く這い上っていた。かじかの啼く音が手近に聞こえ、稲葉を渡って来た
香ばしい風が、莚戸の裾をゆるがせた。高原、七月、静かな夕、螢が草の間に光っていた....
「チベット旅行記」より 著者:河口慧海
ラヤ山中のこの辺に出来るのは光沢があって、そうして粒も日本の米と同じようである。
香ばしい匂いがあってなかなかよい味をもって居る。そういう米を作るために田植をやっ....
「片田舎にあった話」より 著者:小川未明
ちばん興味を覚えるものです。 おじいさんは、そのかんのふたを開けました。すると
香ばしいかおりがしたのです。 「粉じゃ、なんの粉だろう……。」と、頭をかしげまし....
「魂の喘ぎ」より 著者:大倉燁子
しましたが公高の右へ出る男の子は一人もありません。私は得息でした。栴檀は双葉より
香ばしいといいますが、ほんとに公高は輝いていて、生れながらにして人の長となる品格....