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鬱気
「鬱気〜」の文章内での使われ方:小説や文学作品の中から探す
鬱気の前後の文節・文章を表示しています。該当する14件の作品を表示しています。
検索対象[仮名遣い:新字新仮名]
「黒死館殺人事件」より 著者:小栗虫太郎
、むしろ懊悩的で、一見心のどこかに抑止されているものでもあるかのような、ひどく陰
鬱気な相貌をした中老紳士だった。そして、この三人は、まるで聖餐祭の行列みたいに、....
「大菩薩峠」より 著者:中里介山
撰組の頭と近づきだと知ったもんだから、逃げたんだよ。
お角も、そこで、今までの
鬱気《うっき》が晴れて、いい気持になりました。
それから帰るまでのお角さんの身....
「名人地獄」より 著者:国枝史郎
った。舎弟定吉が席を譲った。その席へ悠然と坐った時、道場一杯に充ちていた、不安と
鬱気とが一時に、快然と解けるような思いがした。 「平手、平手」と周作は呼んだ。「....
「高原の太陽」より 著者:岡本かの子
外率直で非生物的だった。 青年のほのかな桜色の顔の色をかの女は羨んだ。かの女は
鬱気の性質から、顔の色はやや蒼白かった。しかし、肉附きも骨格も好くて、内部に力が....
「釘抜藤吉捕物覚書」より 著者:林不忘
った藤吉、そうかとも言わずに退屈そうな手枕、深々と炬燵《こたつ》に潜って、やがて
鬱気もなげな高鼾が洩れるばかり――。 「お、親分え、大事だ。勘弁ならねえ。」 ....
「釘抜藤吉捕物覚書」より 著者:林不忘
て表面がぼろぼろに朽ち果てたところから、井戸一帯に燐の粉が零《こぼ》れて、それに
鬱気《うつき》を生じ、井戸の中、覆《ふた》の石、周りの土までが夜眼にも皓然《こう....
「鳴門秘帖」より 著者:吉川英治
気の弱い、すんなり痩せ細った容で、咳にまじって出る血を、人目に隠しながら、いつも
鬱気でいたお米――それと目の前の人とがどう考えても、同じだと思われなかった。 「....
「三国志」より 著者:吉川英治
※、剣環を鳴らしてざわめき立った。 洛陽入りの後はここに戦いもなかった。長陣の
鬱気ばらしに、ひと喧嘩、血の雨も降りそうな時分である。 だが、驚いたのは、満堂....
「三国志」より 著者:吉川英治
たが、今夜は、旧友幹兄のために、心ゆくまで飲むつもりだ。諸将も客にすすめて、共に
鬱気をはらすがいい」 と、快飲し始めた。 満座、酒に沸いて、興もようやくたけ....
「三国志」より 著者:吉川英治
い思いにほかへ陣を移してしまおう」 瀟々と外は間断なき雨の音だった。こんな時は
鬱気を退治して大いに快笑するに限ると、※徳は友を引きとめて酒など出した。そして二....
「私本太平記」より 著者:吉川英治
の群れが、涸れ涸れな渓流に、水を見つけて、ぴちぴち遊び跳ねているのを覗くと、彼の
鬱気も、いっぺんに飛んでいた。 旱魃いらい、領下の訴え事は、日ましに多い。――....
「私本太平記」より 著者:吉川英治
とぞ、ご酔言もちとおつつしみを」 「だまれ。いまほどな酒で酔いはいたさぬ。ほんの
鬱気を散じるため、薬湯代りに、折々、用いているまでだわ。この高時に酒進らせぬと、....
「私本太平記」より 著者:吉川英治
れながら」 正成は、自嘲を覚えた。 「人のことばのごとく、これはちと、自分の気
鬱気味か」 彼が郷里へ帰ったのは、もう十日ほど前になるが、たれ知らぬまであった....
「柳生月影抄」より 著者:吉川英治
皺を湛えて、 (そうか。それは右門には、よい手鞠が見つかったな。あれはちょうど、
鬱気な猫みたいに、いつも眸が空虚な男だから――) と、笑った。その後もひとりで....