鬱蒼[語句情報] »
鬱蒼
「鬱蒼〜」の文章内での使われ方:小説や文学作品の中から探す
鬱蒼の前後の文節・文章を表示しています。該当する15件の作品を表示しています。
検索対象[仮名遣い:新字新仮名]
「或る女」より 著者:有島武郎
日はかんかんと赤土の上に照りつけていた。油蝉《あぶらぜみ》の声は御殿の池をめぐる
鬱蒼《うっそう》たる木立ちのほうからしみ入るように聞こえていた。近い病室では軽病....
「星座」より 著者:有島武郎
寂しく……大密林だった札幌原野の昔を語り伝えようとするもののごとく、黄ばんだ葉に
鬱蒼《うっそう》と飾られて……園はこの樹を望みみると、それが経てきた年月の長さを....
「デンマルク国の話」より 著者:内村鑑三
ンドの荒地|挽回《ばんかい》の難問題は解釈されたのであります。これよりして各地に
鬱蒼《うっそう》たる樅の林を見るにいたりました。一八六〇年においてはユトランドの....
「鍵から抜け出した女」より 著者:海野十三
た聖域だけに、隆魔山蓮照寺のなかまでは、追跡の手が届いてこなかった。かくて夕陽は
鬱蒼たる松林のあなたに沈み、そして夜がきた。街には賑かな祭りの最後の夜が来た。鐘....
「爬虫館事件」より 著者:海野十三
タスタと足早に立ち去った。園内の反対の側に遺されたる藤堂家の墓所があった。そこは
鬱蒼たる森林に囲まれ、厚い苔のむした真に静かな場所だった。彼はそこまで行くと、園....
「闖入者」より 著者:大阪圭吉
深々と、後方遙かに峨々たる剣丸尾の怪異な熔岩台地を背負い、前方に山中湖を取|繞る
鬱蒼たる樹海をひかえて、小高い尾根の上に絵のように静まり返っていた。――洋画家の....
「河明り」より 著者:岡本かの子
された。 私の肉体は盛り出した暑さに茹るにつれ、心はひたすら、あのうねる樹幹の
鬱蒼の下に粗い歯朶の清涼な葉が針立っている幻影に浸り入っていた。 そのとき娘が....
「霊界通信 小桜姫物語」より 著者:浅野和三郎
よほど深いものと見えまして、湛えた水は藍を流したように蒼味を帯び、水面には対岸の
鬱蒼たる森林の影が、くろぐろと映って居ました。岸はどこもかしこも皆割ったような巌....
「石塀幽霊」より 著者:大阪圭吉
ウメノキゴケの生えた灰色の甍は、アパートのどの窓からも殆んど覗う事の出来ない程に
鬱蒼たる櫟や赤樫の雑木林にむっちりと包まれ、そしてその古屋敷の周囲は、ここばかり....
「初雪」より 著者:秋田滋
女であった。 良人は彼女をノルマンディーにあるその屋敷へ連れて行った。それは、
鬱蒼と茂った老樹にぐるりを囲まれた、石造りの宏壮な建物だった。正面には、見上げる....
「秋の筑波山」より 著者:大町桂月
側面観なるが、正面より、即ち山麓の臼井村より見れば、男体女体の双峯天を刺して満山
鬱蒼たり。春日山や、嵐山や、東山や、近畿には
鬱蒼たる山多けれども、関東の山には樹....
「ガルスワーシーの家」より 著者:岡本かの子
リー皇后の慈善産院の門前へ出た。此処で景子達は一寸立止まって足を休めた。それから
鬱蒼として茂る常磐樹の並木を抜けると眼前が急に明るく開けてロンドン市の端ずれを感....
「明治懐顧」より 著者:上村松園
、毎月十五日円山の牡丹畑で開かれました。その頃の円山公園は、祇園神社のすぐ北側が
鬱蒼とした森で、小径がついていて、あの名高い橡の近くに牡丹畑があり、そこに料亭が....
「西航日録」より 著者:井上円了
に至るまでの間、沿海の諸山、みな赤土を現出し、往々石骨を露出し、一つとして樹木の
鬱蒼たるものなく、満目荒涼、殺風景を極む。あたかも東洋諸邦の形勢を写出せるがごと....
「南半球五万哩」より 著者:井上円了
からず。遠山は雲煙に隔てられて、望中に入らず。寒暖は八十度以上なり。周囲に樹木の
鬱蒼を見るは、いささか趣を添う。 保都城北路、樹満昼陰陰、港上清風足、我来此洗襟....