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「鳶口〜」の文章内での使われ方:小説や文学作品の中から探す

鳶口の前後の文節・文章を表示しています。該当する15件の作品を表示しています。
検索対象[仮名遣い:新字新仮名]
死後」より 著者:芥川竜之介
ない気になり、あとも見ずに書斎へはいって行った。すると書斎の鴨居《かもい》の上に鳶口《とびぐち》が一梃《いっちょう》かかっていた。鳶口は柄《え》を黒と朱との漆《....
雪中富士登山記」より 著者:小島烏水
る。 九合目に来た、もう一杯の雪で、コンクリートで堅めたように凍っているから、鳶口ででもなければ、普通の金剛杖では、立ちそうにもない、胸突八丁、大ダルミなどは....
綺堂むかし語り」より 著者:岡本綺堂
へ、他の一人の槍がその脇腹にむかって突いて来ました。もうこれ迄です。男の血は槍や鳶口や棒や鋤や鍬を染めて、からだは雪に埋められました。検視の来る頃には男はもう死....
槍ヶ岳第三回登山」より 著者:小島烏水
めたく荒い空気に煤ぶっている。 雪は次第に厚く、幅が闊く、辷りもするので、人の鳶口に扶けられて上った、雪のおもては旋風にでも穿り返された跡らしく、亀甲形の斑紋....
夜明け前」より 著者:島崎藤村
急いで行って見た時は、本所方面からの鳶の者の群れが刺子の半天に猫頭巾で、手に手に鳶口を携えながら甲高い叫び声を揚げて繰り出して来ていた。組の纏が動いて行ったあと....
夜明け前」より 著者:島崎藤村
上がるものがある。子供らしい笑い声も起こっている。 山家育ちの子供らは手に手に鳶口を携え、その手のかじかむのも忘れ、降り積もった雪道の遊戯に余念がない。いずれ....
黒百合」より 著者:泉鏡花
ち五六人血眼になって武者振つくと、仏敵だ、殺せと言って、固めている消防夫どもまで鳶口を振って駈け着けやがった。」 光景の陰惨なのに気を打たれて、姿も悄然として....
凧の話」より 著者:淡島寒月
分のことを思い出して話して見よう。その頃、男の子の春の遊びというと、玩具では纏や鳶口、外の遊びでは竹馬に独楽などであったが、第一は凧である。電線のない時分である....
後の業平文治」より 著者:三遊亭円朝
ア困るじゃねえか」 と大騒ぎ。近所では火事と間違えて手桶を持って飛出すもあれば鳶口を担いで躍り出すもあると云う一方ならぬ騒動でございます。只見ると、文治は痩衰....
塩原多助一代記」より 著者:三遊亭円朝
魂消やした、火には追掛けられるようだよ、危えとも危えとも、あんな何うも先の尖った鳶口を担いで駆けていやすから、頭へでも打つけられて怪我でもしては大変でがんす、旦....
落語・教祖列伝」より 著者:坂口安吾
くらすける、というのは、ブン殴るということである。 「それには先ず、てんでが棒、鳶口、クワを持って野郎のウチへ押しよせる。野郎の屋敷をたたきこわして、川へぶちこ....
式部小路」より 著者:泉鏡花
みてえもんだ、と思いましたがね、口へ入ったなあ冷酒の甘露なんで。呼吸を吹返すと、鳶口を引掛けて、扶け出してくれたのは、火掛を手伝ってました、紋床の親方だったんで....
我楽多玩具」より 著者:岡本綺堂
高価いのがあって、その頃でも十五銭二十銭ぐらいのは珍らしくありませんでした。冬は鳶口や纏、これはやはり火事から縁を引いたものでしょう。四季を通じて行われたものは....
仏教人生読本」より 著者:岡本かの子
て運び、それを陸へまた引き上げました。今でもそうですが、この時代にも人夫が材木を鳶口で河岸へ曳き上げるには掛け声をかけたのでした。殿様は河岸へ出張って材木の曳き....
黒部川奥の山旅」より 著者:木暮理太郎
いるようで、何だか通り魔に憑れたような気がした。雪渓は初めてだという実君は頻りに鳶口の苛責を雪に加えている。五、六町登ると谷が左に折れて、突然|豪宕極りなき舞台....