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黄昏時
「黄昏時〜」の文章内での使われ方:小説や文学作品の中から探す
黄昏時の前後の文節・文章を表示しています。該当する15件の作品を表示しています。
検索対象[仮名遣い:新字新仮名]
「白蟻」より 著者:小栗虫太郎
、空気が暖かすぎても冷たすぎても、濃すぎても薄すぎても、病気になり……、たとえば
黄昏時だが、始めのリラ色から紅に移ってゆく際に、夕陽のコロナに煽られている、周囲....
「新生」より 著者:島崎藤村
並木の間に聞えていた。明けそうで明けない短か夜の空は国の方で見るよりもずっと長い
黄昏時《たそがれどき》と相待って、異国の客舎にある思をさせる。隣室の高瀬も、仏蘭....
「支倉事件」より 著者:甲賀三郎
き乱れた庭の沈丁花の強烈な香が書斎に押寄せて来て、青春の悩みをそゝり立てるような
黄昏時だった。若い牧師|神戸玄次郎氏は庭に向った障子を開け放して、端然と坐って熱....
「千曲川のスケッチ」より 著者:島崎藤村
れば見られない光景だ。 薄い靄か霧かが来て雪のあとの町々を立ち罩めた。その日の
黄昏時のことだ。晴れたナと思いながら門口に出て見ると、ぱらぱらと冷いのが襟にかか....
「夜明け前」より 著者:島崎藤村
京と共に各国船退帆の報告をもって、兵庫から京都の二条城にたどり着いたころはもはや
黄昏時に近い。例の御用部屋に行って老中に面謁し一切の顛末を述べようとすると、そこ....
「家」より 著者:島崎藤村
と正太も種夫の方を見て笑った。 そのうちに暮れかかって来た。町々の屋根は次第に
黄昏時の空気の中へ沈んで行った。製造場の硝子戸には、未だ僅かに深い反射の色が残っ....
「海の使者」より 著者:泉鏡花
て、汐入町を土手へ出て、永代へ引っ返したことがある。それも秋で、土手を通ったのは
黄昏時、果てしのない一面の蘆原は、ただ見る水のない雲で、対方は雲のない海である。....
「ある女の生涯」より 著者:島崎藤村
日を過したかということもよく覚えなかった。廊下づたいに看護婦の部屋の側を通って、
黄昏時の庭の見える硝子の近くへ行って立った。あちこちと廊下を歩き廻っている白い犬....
「光り合ういのち」より 著者:倉田百三
って、村境から一里あまりも迎えに行くのだ。朝未明に尾道を立っても、庄原へ着くのは
黄昏時だ。田舎の街道を人通りは極くまれだ。途中で人に遇いさえすれば、綺麗な娘を乗....
「沙漠の古都」より 著者:国枝史郎
うな微妙な色彩をつけ出した。 壁にかけられた油絵のけばけばしい金縁の光輝さえ、
黄昏時の室の中の、鼠紫の空気の中では毒々しく光ることは出来ないらしい。あちこちに....
「おみな」より 著者:坂口安吾
十二、三の頃の話だ。夏も終りに近い荒天の日で、町にいても海鳴りのなり続く暗澹たる
黄昏時のことであったが、突然母が私を呼んで、貝が食べたいから海へ行ってとって来て....
「エキゾチックな港街」より 著者:小野佐世男
がして、志気大いにくじけるではありませんか。 佐世保のステーションに着いたのは
黄昏時で、なるほど、下車する人を見ると米軍の士官や水兵達が大きなトランクや袋なぞ....
「活人形」より 著者:泉鏡花
る。何かと申すうちに、はやここは滑川にぞ着きにける。 八橋楼の亭主得右衛門は、
黄昏時の混雑に紛れ込みたる怪しき婦人を、一室の内に寝ませおき、心を静めさせんため....
「ファウスト」より 著者:ゲーテヨハン・ヴォルフガング・フォン
ファウスト(あたりを見廻す。)
この神聖な場所を籠めてくれる、
優しい、薄暗い
黄昏時よ。好く来てくれた。
渇して纔かに吸う希望の露に命を繋いでいる、
優しい恋....
「俗臭」より 著者:織田作之助
して、その日は朝から何もたべていない。道頓堀川の泥水に川添いの青楼の灯が漸く映る
黄昏時のわびしさを頼りなく腹に感じて、ぼんやり橋に凭れかゝっていると、柔く肩をた....