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黯然
「黯然〜」の文章内での使われ方:小説や文学作品の中から探す
黯然の前後の文節・文章を表示しています。該当する15件の作品を表示しています。
検索対象[仮名遣い:新字新仮名]
「或る女」より 著者:有島武郎
うに熱く目にたまったままで流れずにいる涙を、ハンケチでぎゅっと押しぬぐいながら、
黯然《あんぜん》と頭をたれた木村に、
「もうやめましょうこんなお話。こんな事をい....
「泥濘」より 著者:梶井基次郎
分|非道《ひど》かったということで、自分はその時の母の気持を思って見るたびいつも
黯然《あんぜん》となった。友達はあとでその時母が自分を叱った言葉だと言って母の調....
「オリンポスの果実」より 著者:田中英光
、てっきりぼく達のことについて、なにか言われたのではないかと、勝手な想像をして、
黯然《あんぜん》となったのです。おまけに、そのとき、あなたはぼくが逢《あ》ってか....
「蘆声」より 著者:幸田露伴
また黙った。 今日も鮒を一|尾ばかり持って帰ったら叱られやしないかネ。 彼は
黯然とした顔になったが、やはり黙っていた。その黙っているところがかえって自分の胸....
「田舎教師」より 著者:田山花袋
いかれる身なんですから」こう言って、自分の田舎寺に隠れた心の動機を考えて、主僧は
黯然とした。 「世の中は蝸牛角上の争闘――私は東京にいるころには、つくづくそれが....
「みみずのたはこと」より 著者:徳冨健次郎
れて玉川に遊びに往ったら、玉川電車で帰る東京の娘を見送って「別れるのはつらい」と
黯然として云った。彼女は妙に不幸な子であった。ある時村の小学校の運動会で饌立競走....
「殺人鬼」より 著者:浜尾四郎
苦痛を与えるかということをまざまざと見せつけられて、私は今更ひろ子の身の上を思い
黯然たらざるを得なかつた。
しかし伊達との会見は決して愉快なものではなかつた。....
「ラ氏の笛」より 著者:松永延造
こそ、恐らく、彼れが大きな天空を眺めて楽しむ最後の時となるだろうという事を、独り
黯然《あんぜん》と予覚するのであった。 この美しい月光の宵《よい》、私と彼れと....
「雁坂越」より 著者:幸田露伴
しかしまた振り返って自分等が住んでいた甲斐の国の笛吹川に添う一帯の地を望んでは、
黯然としても心も昧くなるような気持がして、しかもその薄すりと霞んだ霞の底から、 ....
「樹を愛する心」より 著者:豊島与志雄
々にとっては何でもないこの千円が、私にとっては殆んど夢想に等しいものとなる。私は
黯然とした。
黯然として、私は崖の樹木を眺めるのである。樹木は無数の枝を差しの....
「文化祭」より 著者:坂口安吾
たのむ我々の不幸がそこにあるワケです。思えば、実に、そういう次第です」 信二は
黯然と目を閉じて瞑想する。政界の大物の答弁よりもワケがわからない。しかし彼は語る....
「顎十郎捕物帳」より 著者:久生十蘭
へ這いずってゆく。見るさえおどろおどろしいばかり。 ひょろ松と顎十郎、さすがに
黯然《あんぜん》となって、無言のまま眼を見あわせていたが、そうばかりはしていられ....
「巷説享保図絵」より 著者:林不忘
した。ほんとに、こんなに困ったことはございません」
磯五のことばに、おせい様が
黯然《あんぜん》とうつむくと、磯五は、そのほっそりした項《うなじ》へそっと唇《く....
「九月四日」より 著者:岡本綺堂
れ果てたものである。夏草や兵者どもの夢の跡――わたしも芭蕉翁を気取って、しばらく
黯然たらざるを得なかった。まことに月並の感想であるが、この場合そう感じるのほかは....
「フレップ・トリップ」より 著者:北原白秋
皇帝、 その皇后、 手札形の真鍮縁のその御真影こそはあわれであった。 私は
黯然とした。 「撮影さしてください、ね、いいでしょう。」 医専の美少年のMがし....